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東洲斎写楽(浮世絵師)とは?

東洲斎写楽(ふりがな: とうしゅうさいしゃらく、英語: Tōshūsai Sharaku、仏語: Tōshūsai Sharaku)は、江戸時代後期に活動した浮世絵師で、特に役者絵で名を残しています。写楽は、寛政6年(1794年)からわずか10カ月ほどの短期間で140点以上の作品を残し、個性的な表現と劇的な描写で一世を風靡しました。その独特のスタイルは、従来の浮世絵の常識を打ち破り、歌舞伎役者の心理や個性を強烈に描き出すものとして評価されていますが、写楽の正体や本名については謎が多く、諸説があります。

東洲斎写楽の人物伝

東洲斎写楽の本名や出自は不明で、資料も少ないため、浮世絵の世界に突然現れ、短期間で姿を消した謎の人物とされています。一説では、歌舞伎役者や能役者の一員だったのではないかとも言われています。また、写楽の作風は、役者の表情や身体の歪みを誇張し、内面の緊張や劇中の感情を鮮やかに表現するもので、写実的かつ大胆な構図が特徴的です。

彼が活動を始めたのは1794年(寛政6年)、江戸の出版元・蔦屋重三郎の協力によってです。写楽はこの年の5月から翌年の1月までの約10カ月の間に、歌舞伎役者を題材にした役者絵を中心に140点以上の作品を発表しました。彼の作品は大胆で劇的な表現が特徴的であり、役者たちの個性や情感を鮮やかに描写しましたが、商業的には成功しなかったため、活動を中断し、その後の消息は不明です。

写楽の絵は、大胆なデフォルメと陰影表現が特徴で、当時の歌舞伎ファンの間では賛否両論を巻き起こしました。特に、役者の顔を誇張して表現することで、劇中の感情や緊張感を強烈に伝えようとする試みが、従来の美化された浮世絵とは対照的でした。このため、一部からは支持されたものの、商業的には振るわず、活動期間は極めて短かったとされています。

代表作

1. 「市川鰕蔵の竹村定之進」

1794年の作品で、勇敢な武士の役を演じる市川鰕蔵を描いた作品。写楽の代表的な誇張表現が特徴で、緊張感のある視線と力強いポーズが際立ちます。

2. 「大谷鬼次の奴江戸兵衛」

写楽の最も有名な作品の一つ。大谷鬼次が演じた奴(召使い)のキャラクターを描いており、顔のゆがみや鋭い目つきが印象的です。浮世絵の中でも特に劇的な表現が評価されています。

3. 「市川團十郎の不破伴左衛門」

市川團十郎が演じる武士・不破伴左衛門を描いた作品。端正な表情力強いポーズで、役者の気品と迫力を見事に捉えています。

4. 「中村仲蔵の鬼女」

妖艶な鬼女を演じた中村仲蔵を描いた作品。女性らしいしなやかさと、妖怪的な不気味さを併せ持った独特な表現が特徴です。

5. 「松本幸四郎の佐野川市松」

松本幸四郎が演じる佐野川市松の役を描いた作品。写楽特有の表情の誇張が役者の内面的な葛藤を鮮やかに表現しています。

現在の世界的な評価

東洲斎写楽は、活動期間の短さ謎めいた人物像から、江戸時代の浮世絵師の中でも特異な存在として注目されています。彼の作品は、表情の大胆なデフォルメや、役者の内面を表現する斬新な手法により、20世紀以降に再評価されました。特に、西洋美術や現代アートに通じる表現技法が評価され、現在では浮世絵の巨匠の一人として世界中で高く評価されています。写楽の作品は、国際的な美術館やコレクションにも数多く収蔵されており、その影響力は今なお強く残っています。



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